★ 1999-2000 ポルトガルの旅
国旗  ◆ 3日目(1月2日) 【旅の全体地図】 目次へ
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【本日の旅行地図】
【本日の旅程】=トロンコソ→ファーム→タロオカ→ラメーゴ(泊)

◆ 冷たい濃霧の朝
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 朝起き出してみたら、山全体が冷たい濃霧でつつまれており、全く視界が効かないのです。しかも、半端な寒さでは無く、カメラの電池も瞬く間に消耗してしまいます。同行したカメラマンのH氏は、シャッターを切り終わる度に愛する高級カメラをしっかり胸に抱き締め暖めていました。それでも厳しい冷気が、カメラに機敏な動作をさせてくれない、と嘆いていました。
 濃霧は、視界に入る自然を全てモノクロの世界にしてしまいました。道に沿って並ぶ大木の、繁る梢に纏わる霧は霧氷となって、霧氷は育って花びらになり、時おり走り抜ける寒風に、音も無く華麗に舞い落ちていくのです。だから、大木の下一面は凍れる花びら【写真】で真っ白になっていきます。濃霧を透かして目を凝らしてみると、細長い葉の茂る植え込みの一つ一つが、まるで狂った巨人がその白髪を振り乱した瞬間のようにも見えてきます。そんな大小の髪振り乱した無数の頭が、木立と共に霧に包まれて居並ぶ様子は、一種幽玄な世界を垣間見る思いがしてしまいました。ふと、足元を見つめると、地面に息づいていただろう小さな小さな雑草までも、全身白く輝く銀の小粒に縁取りされて、それはまた、愛しくなるような可憐で美しい姿に変身しておりました。その凍れる姿に向かって、バシリ、バシリ、バシリ。連続してカメラマンH氏のシャッター音が響きました。聞けば、1週間に36枚撮りのフイルムで、100本くらいは撮ると言う。驚きました。


◆ ファーム村へ
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チーズ作り
 山を下り、隣村のファームを訪ねてみることにしました。道は凍結しているし、おまけに下りの坂道、ドライバーは慎重を期してユックリ速度の安全運転です。僕らも緊張しながら窓外の雪景色を眺めていましたら、やはり、見付けました。トラックが路肩から滑落して横転、積み荷が散乱していました。そこはカーブしている下り坂、最も危ない箇所であるのはドライバーの常識ですが、ポルトガルでは軽視されているのかもしれません。『飲酒運転やスピ−ド違反は日常的だし、譲り合うのを嫌うから事故も多くなるんだよ。』と、ポルトガル在住の友人が言っていました。ちなみに、その世界第一位が韓国、第二位がポルトガルなのだそうです。
 山麓は晴れ。しかし、肌を刺すような冷たい風が強く吹いていました。おいしいチーズが自慢だと言うその村は、セロリコと言います。人家もまばら、当然人影も少ない。村人に訪ね訪ね、ようやく目的のファームに着きました。
 早速、チ−ズ作りの実際を見学しました。切れ長の大きな目をした
グラマー美人【写真】が、見事な手仕事を披露してくれました。女性のふくよかな手でないと、おいしいチーズは出来ないのだそうですが、この美人の手にかかれば、きっと格別な出来栄に違いない。旨そうだし、欲しいなと思いました。しかし、直径20センチ以上はあるし、重いし…。迷った末に、諦めました。


◆ タロオカにて  【本日の旅行地図はこちら】
 ラメーゴに向かう途中、タロオカという町に寄りました。メンバーの一人、ポルトガル人のFさんが推賞する教会を見学することにしたのです。堂内が黄金張りで、この国では大変貴重で珍しいものだと言う。それは、人気の無い村の高台にひっそりと建っていました。めったに訪れる人もいないのでしょうか、門には錠が下ろされ、管理人も不在でした。建物はいかにも古く(8世紀頃)堂々としています。貴重な文化遺産であるらしく、大規模な修復工事が進められていました【写真】。 

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修復工事中の修道院
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サン・ジョアンニ・デ・タロオカ

 教会に隣接して、かって修道院であったという壮大な建物も修復保存の工事がされようとしていました。中に入れないとなると、尚更に中を見てみたくなるものです。名称は、『サン・ジョアンニ・デ・タロオカ』と言います。kさんが、管理人の自宅を探して連れてきました。足の不自由な老人でしたが、特別に拝観を許可してくれました。待たされている間に、どんどん期待が膨らみすぎた所為でしょうか、いざ目にしてみると、さして感動出来るものではありませんでした。確かに黄金張りであり、当時はどんなにか燦然と光り輝いていたことだろう、と想像しながら眺めました。壁面にかけられている宗教画もいまいちでした。
  しかし、とても素晴らしい一体の聖母子像を見る事が出来たのは幸いでした。管理人に『修復工事を進める為の力になるから』と頼まれ、みんなで芳名帳にサインしました。日本人が訪れたのは、何十年ぶりかであり、これが2度目だと言っていました。となると、『歴史的な訪問』と言うことになるやも知れません。

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黄金張りの堂内
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聖母子像→


◆ ラッキー?ホテル 顛末記
 ラメーゴ<Lamego>に宿泊しました。その夜の事を、少しだけ記しておきます。
世話役のK氏は、ここはポルトガルで一番美しい町と言うのですが、到着したのが夕刻であり、町の観光をする事は出来なかったのでよく分りません。メインストリートの中央に、ローマ時代から続く公園が綺麗に手入れされてありましたが、そこに植えられた木々は大きく幾重にも枝を広げており、その両サイドに走る車道が狭いままなので、いささか息苦しい感じがしてしまいました。その道の突き当りが、この町の歴史ある教会;ムムに至る階段の上り口でした。頂上に向かって真直ぐ造られたこの階段はX字型に美しく構成されており、この町の観光名所の一つになっています。頂上に建つ教会の前が、宿泊する目的のホテルでした。ホテルの前には、樹齢800年と言われる樹木が2本健在であり、いかにも歴史を感じさせる、見るからに立派なホテルでした。
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アンラッキーだったホテルと 樹齢800年の木

◆ ラッキー=悲劇の予兆?
   ホテルで荷物を降ろすと、仲間たちは町へこの町の名物生ハムを買いに出かけていきました。案内された部屋は、白い壁で明るく広く、天井も高くて設備も立派なものに見えました。
『ラッキー! ホテルと言うのはこうでなくっちゃ!』一人大いに幸せ気分に浸り乍ら、夕食までの時間をセミダブルのベットで一息つきました。陽が落ちると、急速に冷え込んできました。備え付けの暖房器は、自動的に運転を始めるとの説明でしたが、触ってみると冷たいままです。フロントに苦情を言ったら係りの男が飛んで来ました。少しは改善されたのですが、『性能はこんなもので故障ではない』と言いはります。諦めて、湯船にたっぷりお湯を張りゆっくり暖まることにしました。

◆ そして悲劇は起こった!
 その夜は、特に冷え込んだのかもしれません。寒くてよく眠れず、見かけ倒しのホテルに腹を立てていました。。こんな些細な事で、『ポルトガルで一番美しい町』も、僕の印象では台無しです。
『何が、ラッキーだよ、、、寛ぐことの出来ないホテルなんて、そんなのアリかよ、、、!』裏切られた旅人の泣き言でした・・・(^^; 

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