★2004シャクナゲ満開・英国の旅
◆8日目(6月4日)薄曇り
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 今日の午前は,大英博物館とロンドン市内観光が予定されており、午後のフリータイムを利用してナショナルギャラリーを訪ね、ショッピングと街の散策をしてみようと思う。

◆大英博物館


大英博物館
 ロンドン観光の名所としては、筆頭に位置する大英博物館【写真・左】。街の中心に在り、威厳に満ちた堂々たる姿を見せていた。当然、今回のツアーの目玉の一つ。と言っても2時間足らずの見学時間である。何程の物を見ることが出来ようか。質量ともに世界一とも言われている収蔵品である。「迷子にならないように付いてきてくださ〜い」というガイドの姿を確かめつつ、のんびり立ち止まることも出来なかった。

◆ロゼッタストーン


ロゼッタストーン
 まずは、この博物館の秘宝とも言われているロゼッタストーンを見学した。やはり人気の石だけあって、大勢の人の注目を集めていた。ケースに収められ光の反射もあって巧く撮影することが出来なかった【写真・右】。文字を鮮明に写せなくとも、実物を見ることが出来たことは感動ものであった。
  この石の発見により、古代エジプト象形文字が解読されることになったのだから、歴史を知る上での革命的な成果であったことは容易に理解出来る。しかし、解読されるまでの苦労は大変なものであったようだ。同じ内容の碑文を3種類の文字で記してあったことが,解読する為の最大のヒントになったらしい。それにしても、この謎解きに成功した学者の頭脳、推理力を支えた情熱、凄いものだと感服した。
  こんな凄い宝物を持っていかれたエジプトは、どんな思いをしているのだろう。同じくギリシャやイタリアも沢山の歴史的文化財を持ち出されて悔しがっているに違いない。いわば暴力的に集められたと聞いている1級品が、きれいに整理されて分かり易く展示されていた。集め方はともかく、大切に取り扱われていることは救いである。

◆様々なミイラ

  タイタニック号に積まれて一度は海底に沈んだミイラの棺とか、灼熱の砂漠に埋葬されて乾燥ミイラになったもの、或はミイラにする為、腹部を切開して内臓が摘出された痛々しい姿のミイラなどを見学した。霊魂不滅の信仰に基づいて作られたミイラ、身分の高さに応じてその棺は豪華なものになっていた【写真・左】

ミイラの棺
   それぞれのミイラについての歴史を遡ることが出来たら、どんなにか興味深い物語があるに違いないと思った。一度はタイタニックと運命を共にしたミイラは、受け取り先のカナダに拒否されてしまったと言う。どんな事情があったのだろうか・・・。砂漠の中でミイラ化してしまった男性は、生活用品に囲まれてリアルな姿を晒していたが、どんな日常を生きていたのだろうか・・・。ミイラに処理された人の姿を展示するのは、いかに説明の為とは言え惨いと思う。
  後になって、沢山の見学者の中に、ミイラに向って一人手を合わせている日本人男性の姿があった、と聞いた。それは、同じツアー仲間のO氏であったらしい。見かけは豪放闊達な感じの方であったが、しみじみ心優しい人なんだなぁ、と見直す思いをさせられた。

◆ライオン狩りをする王

 ライオン狩りをする様子をレリーフ作品にしたものは、今迄に何度か見たことがあるのだが、「ライオンを殺すことは王様にしか許されないことであった」というガイドの説明は新鮮であった。聞かされて納得。王であることの力を誇示するのに、これ程相応しいモチーフは考えられないのではないだろうか【写真下・上側】。何と言っても、ライオンは百獣の上に立つ王なのだから。


狩りをする王

苦しみ喘ぐライオン

  厚み1センチ程のレリーフでありながら、力感溢れた表現には舌を巻く。断末魔の苦しさに喘ぐライオンの姿には凄まじい迫力があり、作者の豊かな感性が溢れていた【写真上・下側】
  そして、ギリシャ・ローマの彫像などを見て回った。よくぞ、こんなにたくさん集めたものよ、と呆れるほどの多さであった。

◆チャイナタウンで飲茶料理

 昼食はチャイナタウンで飲茶料理。日本人には、ほっとする食材である。丸いテーブルに次々と運ばれて来る暖かいぎょうざやしゅうまい、ジャスミン茶を頂き乍ら,食が進む。最後にチャーハンが出されたが、小振りの椀に半分が精一杯であった。

◆バッキンガム宮殿


宮殿前広場
 予定にはなかったのだが、ホテルから近いところに宮殿があったこともあり、現地ガイドが衛兵の交代パレードが良く見える場所まで案内してくれることになった。観光名物にもなっているその様子を見る為に、宮殿前広場は世界中から集まって来た人たちで賑わっていた【写真右】
  その人波をかき分けるようにして、ガイドは自信に満ちた足取りで案内してくれた。指定された場所に陣取り、その時を待った。予定の時間を30分位遅れて、正面入り口の門が左右に開かれた。鼓笛隊を先頭にして、赤と黒の制服を着た兵隊たちが現れた。まるで人形のように可愛いい。大型犬を連れた兵が先頭に立ち、兵舎に向って整然と行進【写真下】、あっという間に視界から消えた。つかの間の見物であった。


行進する衛兵

◆ナショナル・ギャラリー

   添乗員の顔を立てるために、「イギリス屋」までバスで行きちょっぴり買い物。そこから地下鉄を利用して【写真左】、再度「チャリングクロス」に行き下車。地上に出て、トラファルガー広場を横切る。広場に面してナショナル・ギャラリーの威容が目に飛び込んできた【写真右下】。英国が世界に誇る美術館である。

 最初は個人のコレクション38点を議会が買い上げ、初の国立美術館として発足したのが1824年。その後、積極的に充実化が進められ、協力者も増え、現在の2000点を越える規模にまで発展してきたものらしい。
  内容は自国の美術よりヨーロッパ本土の美術が中心になっていた。今日迄の美術館の歩みを調べてみると、博物館とは基本的に性格を異にしていることが分かったし、市民が力を合わせて守り育てて来たことも理解出来た。正真正銘、英国の文化遺産であり財産だと言えそうだ。当初から無料で公開を続けているのは、そんな誇りがあるからであろう。心から敬服し、素晴らしいことだと思う。しかし、これだけの膨大な施設・財産を維持・管理するためには、それ相当の経費が必要であることも分かる。入り口に募金箱が置いてあり、カンパの要請が書かれてあった。子供にお金を投じさせる親の姿が多く見受けられ、これ又敬服させられる素晴らしい情景であった。僕らも、感謝の気持ちで手持ちのコインをカンパした。

 絵画作品の展示壁面に限ってみれば、フランスのオルセー美術館より少し広い位であろうか。到底、全部の部屋を見て回ることは出来ない。一応印象派を中心に絞って鑑賞したが、時間の制約もあり、体力の限界も感じて楽しみを次回に残すことにした。
  外国の美術館ではよく見かけることだが、此処にも名作と対峙して一心に模写をしている若い女性画学生の姿があった。その出来映えはなかなかのものであり、実物の名作より彼女の作品のほうが多くの鑑賞者の注目を集めていた。こうした若い人がいて初めて伝統が受け継がれて行く。将来がとても楽しみな学生だと思われ、その姿が何故か眩しく感じられてならなかった。もはや望んでも叶わぬ世界を、目の前に見たからであろうか。せめて、時間が許してくれるなら、もっとゆっくり鑑賞したいものだと思った。

◆ショッピング

 今日はまだ、もう一つ果たさねばならないことがある。疲れた体に気合いを入れて、紅茶で有名なフォトナムメイスンの店を訪ねた。日本でも入手できるブランド品であるが、紅茶の好きな友人からまとめ買いを頼まれていたし、別の友人からのリクエストも果たさねばならないと思ったからである。
  店に入って驚いた。想像を絶するその品数の多さに目を見張った。幸い銘柄の指定は聞いていたので迷う事はなかったが、送料を聞かされて又驚いた。航空便で送ると、ほとんど倍近い値段になると言う。しかも、他の方法はないと言うので困ってしまった。これでは、ロンドンで買う意味がなくなるではないか。

 1缶250グラム。それが12個、計3キロ。病み上がりの疲れた体には、いささか重い。しばし、迷ったものの心を決めた。お互い年金暮らしの身である。節約しなくては!・・・つくづく貧乏性だと思う。
  後日談だが、帰国後、友人に喜んでもらえたのは当然としても、航空便で送ってもなおかつ、その方が日本で買うより安価なのだと聞いて又驚いたものである。

 運び易いように、しっかり荷造りしてもらった紅茶を手に下げると、その重さと共に旅の疲れがズシリ・・・ときた。ホテルに帰ってゆっくり休もう・・・と思った。
  何故か,海外ではいつも元気な家内が言った。
「まだ、たっぷり時間はあるわ、これから何処に行こうか?」
「もういい・・・」小さく返事した。
「勿体ないじゃない、そんなに疲れたの?それじゃ私が持って歩くから・・・」
  そこまで言われると意地を張りたくなる。そうした反応は読まれているらしいな、と内心苦笑しながら、重くなった足をそれと気付かれぬようにして歩く。彼女は、時々手を伸ばし一緒に荷物を持って歩いてくれた。

◆ロンドン塔とタワーブリッジ


ロンドン塔
   再度,地下鉄を利用してタワーブリッジを見に行くことにした。
地下鉄・TOWER HILL駅で下車、地上に出たら、ロンドン塔が目の前に在った。今回は、中を見学することは出来ないが、興味深く思っている建物である。暗いイメージを持っていたが、西日に照らされた建物は、中世の城塞を思わせてどっしりとした佇まい、これは絵になる眺めだな、と思った【写真左】

タワーブリッジ

 ロンドン塔を左に見乍らテムズ川に近づくと、タワーブリッジがすぐ近くに見えた。何度も画像で見ているので、懐かしい感じの眺めであった【写真右】。絵になる構図を探し乍ら川岸を歩いていたら、ベンチでガイドブックを見ている日本人男性がいた。近づいて見ると、同じツアー仲間のO氏であった。彼は一人参加であり,ほとんど日本語を使って豪快に旅を楽しんでおられたバイタリティ溢れるご仁である。まだ、もう一カ所見てみたい所があるという氏とは、地下鉄の中でお別れし、何とかホテルに辿りついた。疲れた。

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