★ 2000 のんびり・スイスの旅
 ◆ 6日目(7月16日) 【全体地図】 目次へ
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【本日の旅程】=ベリンツォーナ(泊)、マドンナ・デル・サッソ訪問→アスコーナ現代美術館訪問

 今日は、隣町の ロカルノ <Locarno> とアスコーナ <Ascona> を訪ねてみることにした。 ロカルノは、ベリンツォーナから列車で30分。マッジョーレ湖 <Lago di Maggiore> の北側に在る陽気なリゾートと聞く。 アスコーナは、ロカルノの駅前からバスで約15分。かっての漁村は今、”マッジョーレ湖の真珠”と称される程のリゾートとして有名になった。


◆ マドンナ・デル・サッソ <Madonna del Sasso>
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 ガイドブックのお薦めに従って、まずはマドンナ・デル・サッソを訪ねてみる。 ロカルノ駅から5分位歩いた所にケーブルカー乗車駅があった。ここからケーブルカーに乗って北側の山を登り【写真左】、5分位で山頂駅に到着。山頂駅を出るとすぐ眼の下にはオレンジ色のマドンナ・デル・サッソの建物が美しく望まれ【写真下左】、その背景にはマッジョーレ湖が横に細長い形で展望出来た。湖の対岸はイタリア領である。
 ここは、この地方の聖地として名高く、巡礼者が後を絶たないそうだ。特に今日は日曜日だから、沢山の信者で賑わっていた。 急な斜面につけられた階段を下り、聖所を訪問。聖堂ではミサが執り行われており、しばらく同席。聖歌隊の賛美歌を聞き説教に耳傾け、厳かな雰囲気に浸ってみた。
 マドンナ・デル・サッソのビューポイントを求めて西側の斜面を探してみる。幸い崖を少し下った所に格好の場所を見つけることが出来た【写真下右】。日陰になっており、涼風が流れ、おまけにベンチまであるではないか。ここは、地元の人たちの散歩道らしく、ひっそりとしていて写生する場所としては申し分なしである。持参のパンと紅茶で昼食をとり、静かな環境に感謝しながらゆっくり写生に取り組んだ。
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マドンナ・デル・サッソ
Madonna del Sasso
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マドンナ・デル・サッソとマッジョーレ湖
【油彩画の完成作品はこちら】


◆ ヴィスコンティ城 写真をクリックすると拡大画像が見られます
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ヴィスコンティ城 ↑  とその内部→

 10世紀に創建されたという石作りの城館が保存されているというので、地図を頼りに歩いて訪ねた。それはひっそりと町はずれに建っていた。
 いかにも長い年月の経過を誇示するがごとく、城館の石壁はしっかり黒ずんでいた。玄関入り口までのアプローチはゆるく勾配がつけられており、そこには白い小判状の石が縦に敷き詰められてあった。馬車のわだちですり減ってしまったのだろうか、そこには2筋のゆるい窪みが認められ、歴史そのものを見る思いがした。思っていたより、規模の小さい建造物であったが、迷路の様な通路や階段と共に内部の建材や設備もしっかり保存されてあり、当時の生活を具体的に理解することが出来るものであった。
 現在は 、考古学博物館 として一般に公開されている。 隣接して新しく展示館が建てられており、そこには年代や地方ごとに整理された発掘品【写真下左】が展示されてあった。中でもローマ時代の素晴らしいガラス製品には驚かされた【写真下右】
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ローマ時代の兜など
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ローマ時代のガラス製品



◆ アスコーナ現代美術館 (アスコーナ)
美術館看板
 アスコーナ行きのバスは、沢山あった。それだけレジャー基地として賑わっていることの証明だろう。しかし、僕らの目的は美術館訪問にある。此所は、以前からアーテイストが沢山集まる芸術村としても有名であり、今も様々なジャンルのアーティストが住んでいるらしい。
 バスの終点から歩行者天国になっているメインストリートを湖畔に向って下って行くと、美術館は途中の右側に在った。通りに面して並ぶ同じような建物の一つであり、気をつけて見ていても見のがしてしまいそうであった。
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MARIANNE 『秋』 (1907年)
特に1920〜30年代には、大戦を逃れて世界各国から集まって来た芸術家たちが「大熊」というグループを作り、表現主義の運動を展開した。

 そのグループの一人で大変魅力的な女流画家の作品と出会うことが出来た。名前を MARIANNE VON WEREFKIN と言う。彼女は78歳まで活躍し、1938年に死去している。リーダー格として活躍した彼女の業績を中心に整理し展示しているのがこの美術館であった。中でも『秋』と題する作品にはすっかり魅了されてしまった。

★親切な応対に感謝感激!

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MARIANNE 『赤い木』
 素晴らしいアーティストに出会えてとても喜んでいること。日本からここまで来た甲斐があったこと。彼女のことをもっと知りたいので、出来たら英語版の資料が欲しいこと。などを応対してくれたご婦人(館長?)に伝えたら、彼女も喜んで協力してくれた。
 「英語版はないけれども・・・」と言って分厚い本を見せてくれ、MARIANNE が日本の浮世絵に影響されていたことを記述したページを示しながら彼女についての話をしてくれた。僕も、そのことを感じていたと話し、「ますます彼女に魅力を感じるが、その本は読めないし重いし・・・諦める」と伝えた。ニッコリしながら彼女は「ちょっと待って」と事務室に消え、そのページの部分だけをコピーして「どうぞ」と手渡してくれた。その心のこもった親切に心から感謝する。
 日本では考えることも出来ない心配りである。更に「記念に」と言ってMARIANNEの絵はがき『赤い木』を1枚プレゼントしてくれた。握手をし、手を振ってお別れをした。


◆ マッジョーレ湖の真珠
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 思いもかけない素敵な出合いは、僕らをとても満ち足りた優しい気持ちにしてくれた。「よかったね」。もう一度美術館を振り返り、ぶらぶら湖畔まで歩いていった。
 そこにはカラフルな建物が建ち並び、明るい太陽に照らされて、通りは観光客で賑わっていた【写真左】。青い水面には観光船が白い航跡を残して走り、ヨットハーバーには、幾叟もの船が舫いである。湖畔を散策している人、棕櫚の木陰のベンチに座ってキラキラ光る湖面を飽かず眺めている人たち・・・時間が止まってしまったような平和な眺め【写真右】に、僕らもしばらくぼんやりしていた。「マッジョーレ湖の真珠か・・・」と呟きながら。 振り返ってみると、今日も1日、日本人との出会いがなかった。いささか不思議な気がする。

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