◆ 笑顔のキルヒナー、さようなら。
キルヒナー氏と家内 |
9時半、チェックアウト。「宿賃は1昨年と同じでいいよ」。一月前になるが、電話で話した時にオーナーの彼はそう言った。確かめるまでもなく、精算書には約束通りの金額が示してあった。口約束ではあったが、忘れずにいてくれたことが大変嬉しい。口には出さないが、改めて彼に対する信頼感を厚くした。先年もそうであったが、「バスの停留所まで送って行ってあげる」という彼の好意に甘えてワゴン車に乗りこんだ。「2年位したら、又、此処に来たいと思っている」と伝えると、「いつも健康で笑顔を絶やさないように!」と彼は優しく答えた。そう言えば、笑顔でなかった時の彼は記憶にない。白いひげが良く似合う彼に、先年年令を尋ねたことがある。彼は嬉しそうに「貴女と同じだよ」と笑顔で答えた。「えーっ!?」。とても驚いたことを覚えている。今でも、半分はウソだろうと思っているのだが、確かめてみようとは思わない。彼の名前は、ウイリアム・キルヒナー。小柄でまことに誠実感溢れるいい男である。お別れの握手をし、記念に1枚ツーショット【写真】。窓から出した手を振り乍ら、彼は笑顔のまま帰って行った。何時の日にかきっと又、元気な笑顔で再会したいと思う。
10時13分発、サン・モリッツ行きのバスに揺られ、マローヤを後にした。 |