★キューバの休日8日間
◆4日目(1月16日) 晴れ 目次へ
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◆さとうきび畑
 7時半、トリニダーへ向う。窓外には、きれいな青空が広がり、さとうきび畑が果てしなく続いて見えた【写真右】。 その中にヤシの木立ちが現れたり【写真下】、林が続いたりした。広大な牧草地に草を食む無数の牛の姿もあった。 整然と植栽されている柑橘畑の規模も呆れる程に大きなものであった。地平線に山らしきものは何一つなく、 いかにもキューバらしい眺めかな、と思った。
 さとうきび畑は、3年ごとに他の作物と切り替えられると言う。同じ土地に3年以上続けて栽培すると、 土地が痩せてしまって収穫は落ちてしまうからだそうだ。その所為であろうか、遊んでいる土地が沢山あるように思った。


さとうきび畑
ヤシの樹
◆サービスエリア
 途中でトイレ休憩。果てしなく広がる畑の中を切り裂くように高速道路が交差していた。 その一画にサービスエリアがあり、そこには、売店やバーもあり、蒸気機関車も展示されていて、 バスの乗客たちで賑わっていた【写真右】
 交差点には、沢山の人が立って居た。ヒッチハイクを希望する人たちであった【写真下】。 何時になったら叶えられるか分からなくとも、それを待つしか方法がない人たち。しかし、彼らの表情からは さほど暗いイメージは感じられなかった。助けてくれる車も多いのに違いないと思う。


砂糖黍畑で活躍した蒸気機関車
ヒッチハイカーたち
◆有料トイレ
 キューバのトイレは、有料である。空港は勿論のことレストランも然りである。 但し、料金はいわゆるお志で、最低金額のキューバコイン(5円位?)1枚でも構わない。 強制でないことは分かっていても、トイレ入口におばさんが料金箱を手にして頑張っていると、 それを無視して通り抜けることは難しいし、マナーとしても許されないことだろう。 しかし、料金を取るだけのことはあって清潔にしてあり、気持ちよく使うことが出来た。 男性は、原則的に無料で使えるのだが、此処はトイレ入り口が狭かったこともあり、気の弱い僕は おばさんの持つボール箱にコインを入れずに中に入ることが出来なかった。

 一般的には、便器にあるべきはずの便座はなくテイシュもないのが常識だと聞いていたが、 旅行中に使ったトイレには便座が付いており水も流れて、概ね良好であったらしい。観光立国を目指しているキューバである。 懸命の努力を傾注しているのであろう。
◆昔、監獄のレストラン
 丁度12時、古都・トリニダーに到着した。
ユネスコの世界遺産に登録されている古い町で人口3万5千人。サンクティ・スピリトゥスの州都である。 16世紀初頭に建設され、18世紀には作物と奴隷売買の中心地となり繁栄、 古い街並は当時のまま国の貴重な建築物として保存されているので、町ごと博物館とも言われているそうだ。



レストランの中庭

 街のセンターに駐車。其処には、歴史を感じさせる古い教会が建っていた【写真右】。まずは昼食。 その昔、監獄であったという建物がレストランであった。中庭には大砲の筒が飾られており、 建物の壁は白や黄色の花咲く蔦で覆われていたので、監獄の面影はなかった 【写真上】【写真下・2点】。 しかし、高い天井や鉄製の間仕切りなどを眺めていると、なる程、と納得させられる思いがした。


レストラン前の広場に建つ教会
庭に咲いていた花
庭に咲いていた花
E夫人と楽士たち

 素朴極まりない料理が運ばれだしたら、純朴そうな垢抜けない楽士たちが整列して演奏を始めた【写真左】。 昨夜、世界の一流に接して来たばかりの我々である。余りの落差に白けてしまう。パラパラの拍手しかもらえないまま、 3曲、演奏し終わったら姿を消した。もっと、しっかり拍手をしてやればよかったなぁ・・・。
◆スケッチの達人
 いつも感心ばかりしているのだが、気がつくと、E夫人のスケッチは始まっていた。 手には常にスケッチブックがあり、彼女がなにかを眺めている時は、スケッチしている時であり、少しも構えた感じがないので、 回りに居る人が気付かない程である。モデルにされている楽士たちも意識していないのかもしれない。
 迷いのない線描だから、仕事も早い。その場の情景を短時間で、なおかつ的確に描写する早技は、 誰にでも真似出来ることではない。E夫人は、旅のスケッチの達人と言えそうである。
◆カリブの白昼夢
 腹ごしらえが出来たところで、石畳の道をぶらぶらと町の観光に出発。 最初に市立博物館に寄った。 館内の展示物【写真右】のあまりの貧弱さにはがっかりであった。 急ならせん階段を登って、屋上に出てみた。 360度の町の景観、これはなかなかのものであった【写真下】。 赤い屋根瓦はスペインの色だ。ポルトガルでも同じ屋根を見かけたことがある。 屋根の隙間から見える壁の色は、この地で生まれたカリブの色だろう。

世界遺産:トリニダーの街

大砲と弾



 サンティシマ教会は、外から眺めただけ【写真下】
 町の中心を散策しているのに、人影はまばらであった。 カリブらしいパステルカラーの壁が眼に優しい【写真右】【写真右下】

サンティシマ教会


街並
街並


歪んだ石畳の道には、一段と貫禄のあるクラシックカーが息を潜めていた【写真下・左】
実際に動かない限り、時代に取り残された廃車としか思えない。
近寄って車内を覗いてみたら、
ダッシュボードの上に専用の小型扇風機が取り付けてあった。
クラシックカーファンにとっては、垂涎の的となるものではなかろうか。
タイヤを見たら、4本とも健在であった。
意外な思いで見つめていたら、「私は現役だよ」と、語りかけてきた。
思わず、「そうですか・・・!」と,呟いてしまう。

路地を曲がると、遂に傾いてしまった赤いアメ車の姿が在った【写真下・右】
化粧の剥げてしまったボデイが、無慈悲にも明るい太陽に晒されて、
それは年老いてしまった悲運の女優にも似て痛々しい。
淋しげで哀れを感じさせる眺めであった。

クラシックカー
赤いクラシックカー



唐突に、石畳に響く元気なヒヅメの音が近づいた。
振り向けば、4頭の馬に跨がった青年たちの姿が在った【写真右】
青い空と古い家並を背に、馬も男たちもキラキラと美しく輝いていた。
何やら、大きな声で語り合い乍ら、
眼の前を通り過ぎたと思う間もなく、光の中に消えてしまった。

これもカリブの白昼夢、タイムスリップをしてしまったようだ。
しばし町の中の時間は止まってしまい、不思議な感じの眺めに浸った。


村の青年たち
◆「ラ・カンチャンチャラ」
 町の名物:「ラ・カンチャンチャラ」で一息入れた【写真右】
店の名前はこの地方の名産ラム酒のカクテル名だそうだ。
看板
葉巻作りを実演して見せる白い帽子のおじさんと【写真右】、 藁細工を作ってみせる白い衣装のおじいさんと【写真下】、 共に、白い帽子を被って、寡黙のまま手だけは休まず動かしていた。

葉巻実演
藁細工
庭の片隅に、赤やふじ色の花が咲いていた【写真下・2点】
静かな昼の一時である。
庭に咲いていた花
庭に咲いていた花


ラム酒にはちみつとレモンを混ぜたカクテルがカンチャンチャラ。
小さな素焼きの器に盛られて配られた。 日陰の多い庭に並べられたテーブルとイスに腰を下ろして賞味した。 これがカンチャンチャラなのか・・・期待は外れた。 キューバの酒は、灯りの下で歌い踊りながら飲むものなのだろう。 この店は、夜になるとそんな音楽で盛り上がる名物バーと聞いた。 歓迎の印に、おじいさんが叩いてくれるボンゴのリズムを聞き乍ら【写真右】、 ぼんやりそんな感想を抱いていた。
ボンゴを叩くおじさん


◆「尻尾を丸めた可愛いトカゲ」
トカゲ
尻尾を丸めた可愛いトカゲ【写真左】
何気なく、足元に眼を向けた時、生き物の姿が過ったように思った。 改めて、眼を凝らして眺めてみた。 居た!それは、小さなトカゲであった。 クルッと尻尾を丸めている。丸めたままのシッポを背中にして、機敏に動く。 目測してみたが、体長3〜4センチ位しかない。 こんなトカゲ君を見るのは初めてのことであり、驚いてしまった。

このトカゲ、余程小心者で用心深いようだ。 こちらの動きを察すると、直ぐに穴に隠れてしまうので、 なかなか撮影することが出来ない。 しかし、10秒もするとそっと顔を出して様子を伺う。 同じ穴から、別のトカゲも姿を見せた。 一段と小さい姿をしていたが、同じようにシッポを丸めている。 息を潜めて眺めていたら、更に1匹現れて、尻尾を丸めたトカゲが3匹。 チョロッ、チョロッと移動する。 その様子が、観ていて何とも可愛いらしい。

何としても撮影したいと思った。 そこで、彼らが隠れている時間を使って、あらかじめカメラをセットして待ち伏せた。 何しろ、小さなモデルだから、相当接近しなくては撮影出来そうにない。 手持ちのカメラは1眼レフだから、ファインダーから覗かなくては構図が取れない。 やむなく地面に肘を付き、極力姿勢を低くしてシャッターチャンスを待った。
掲載した画像は、そんな苦労をして撮影出来た1枚である。
◆丘の上の宿
今夜の宿は、丘の上に建つホテル・ラス・クエバス。 部屋は、それぞれ独立したコテージ形式の家屋になって丘の上に散在していた【写真右】
周囲には、南国のヤシの木が茂り、それは赤い花や実をつけていて奇麗であった【写真下・左】【写真下・中】。 花で飾られた珍しい樹木が在った【写真下・右】。植物に詳しい同行のK氏に尋ねてみた。 「豪華で華やかだから、アフリカではこの花を一枝折り棺に添えて使っていました。 だから、通称「葬式花」と言われていました」と。しかし、正式名は不明である。


丘の上の宿
赤い実を付けたヤシの樹
煌めく赤い花
通称:葬式花


部屋に入ると、ベットの上に作られたスワンが眼に飛び込んで来た。 白のバスタオルを上手に使ってのカップルスワン。 赤い花も添えられており、なかなかに心和むオブジェであった【写真右】
カップルスワン
◆ひと仕事
 時計を見たら、4時を少し回っていた。 デイナー迄には、まだ2時間を残している。貴重な時間である。 写生道具とカメラをザックに入れて、急いで丘を下った。

西陽に照らされる古い家並が魅力的。崩れかけた教会が青空を背に気高く輝いていた【写真右】。 広場に立つ大きな木の下に腰を据え、大急ぎで写生に取り組んだ。 黒い犬が一匹近寄ってきただけで、誰にも邪魔されずに仕事が出来た。

特に、ツアーに於いては、自分の都合は2の次である。だから、 魅力あるモチーフとの出逢いがあっても諦めざるを得ないのが通常である。 それだけに、今日は拾いものをしたような気分であった。
古い教会
トリニダー風景(水彩)
◆司祭と眺めたサンセット
 集合時間に遅れてはならじと、坂道を急いだら息が上がってしまった。 丘の上には、正に沈まんとする夕陽を浴びて、赤く染まった司祭の像が建っていた。 気高く美しい姿だと思った【写真右】。ともかく1枚撮らせてもらった。
台座には、バルトロメ・デ・ラス・カサス(Bartolome de las Casas)と刻まれてあった。 後刻、調べてみたら、歴史上に名を残す偉い司祭であった。
司祭の立つ方向には、カリブ海が一望出来た。 陽は赤く燃え乍ら、静かに雲に隠れ海の向こうに沈んでいった【写真下】。 旅情がかき立てられる一瞬である。
バルトロメ・デ・ラス・カサス像
サンセット
ライン


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