明るいロビーの外は草原であった。その草原には古代に造られた前方後円墳の姿が在った。それは若草色に染められたお椀のような、愛らしい形の古墳であった。館内にはその古墳の周辺を再現した当時の模型【写真】も造られてあった。居ながらにしてタイムスリップすれば、ガラス窓の向こうには古代の人々が動いているのである。きれいに区画された畑には、素足にぞうりの農民が仕事に精を出していた。その模型にも刺激されて、イメージは現実の古墳と古代の景観とが重なりあい、しばし不思議な体験を楽しんだ。
◆ 五百羅漢(東光寺)
残された時間を睨みながら、「宇佐神宮と五百羅漢、両方見るのは無理だと思うよ。宇佐神宮を希望するなら、駆け足になるかな・・・?どうする?」友人に聞かれて、宇佐神宮は諦めることにした。ゆっくり羅漢さんに会ってみよう。
うららかな午後の日差しをあびながら、たんぼの中の細い道をのんびり走った。小さな集落の中に五百羅漢がある東光寺を見つけるのには、ちょっと手間取ってしまった。集落はひっそりとしており、お寺には人の気配すらなかった。白い梅の花咲く参道を辿り、朽ちかけた木戸を潜るとすぐそこに、なにやら賑やかに羅漢さんたち、全員こちらを向いて並んでおられた。正確には542体だそうだが、重なり合うように斜面の雛壇に横並び、一人一人違った個性の羅漢さんたちは、その表情の豊かさが魅力である。笑い顔、悩む顔、思索に耽る顔、怒り顔・・・これだけ沢山居並ぶと、自分に似た羅漢もおられるように思われ、しみじみとした親しみを感じてしまう。埼玉県・川越で名高い喜多院の五百羅漢像と比べると、総じて小型であり明るい表情の羅漢さんが多いように思われた。
西に傾きつつある日差しを正面に受けて果てしなく続く羅漢さんたちの静かな賑わい、もうしばらくその場に居たいと思ったが、お別れの時間が迫っていた。 |