★ 2000 のんびり・スイスの旅
 ◆ 9日目(7月19日) 快晴 【全体地図】 目次へ
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【本日の旅程】=ソーリオ(泊)、トンバル登山

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今朝も快晴。
黎明の空に Mt.Sciora のシルエットが美しい。
(地図予定)


◆ トンバル登山
 今日は、トンバル <Tombal> まで登ってみることにした。北側に聳える山の中腹ではあるが、此所から標高差が400m位ある。かなり急な斜面なので、アプローチを長くとってしっかりした路がつけてある。1昨年も登ったのだが、残念乍ら雲が多くて期待した展望が得られなかった。幸い今日は良い天気である。再度トライしてみることにした。しかし、今年は家内にハンデイがあるので、決して無理は出来ない。のんびり、ゆっくり、散歩するつもりで歩き、行ける所まででよしとしよう。途中から引き返すつもりで出発した。
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登山道より Pizzo Badile を望む
 ホテルPalazzo Salis の横から細い路地を抜け、坂道を登り始めたら、道に座ってスケッチをしている中高年の4人の外人に出会った。制作の邪魔にならないように軽く挨拶を交わして通り過ぎようとしたが、中の一人が話しかけてきた。ドイツのブレーメンから来たという。聞けば、何と同じホテルの隣の部屋の客であった。「今朝早くベランダでスケッチしているところを見かけた。覗いて見ようとしたが、背中に隠されて見ることが出来なかったよ」と笑う。ホテルで再会することを約束して別れた。楽しそうに制作に打ち込んでいる彼等には、とても好感が持てた。さーっと眺めるだけで通過していく観光客の多い中にあって、じっくり腰を据えて風景を鑑賞し、感動の表現に夢中になっている人たち、素晴らしいと思う。
 登山口で、4人の健康的なファミリーに出会った。バーゼルから来たと言う彼等は、2週間のバカンスを家族で楽しんでいた。同じくトンバルを目指していると言う。持参の地図を広げてルートを確認する。等高線も調べて、標高差400m位だが急な登りはなさそうだ、登り2〜3時間位かなと言う。しっかり足元も固めて元気な彼等には、先に行ってもらった。「出来たら、頂上であいましょう。」手を振って見送った。
 一度登ったことのある路は、安心感が違う。天気も上々、緊張することもなくのんびり歩くことが出来た。何時の間にか、ソーリオの集落が眼下に小さくなっていた。

 ストックを使って、ゆっくりしたペースで歩く彼女に調子を確かめる。「もう少し、大丈夫みたい。」休憩の後に再び前に向って歩き始めた。樹林の向こうにPizzo Badile(3308m)の姿が美しい【写真】。森林限界に来たのか、展望が良くなってきた反面日陰がなくなり、疲れてきた身体に暑さがこたえる。「せっかく此所まで来たのだから・・・」。目的地はまもなくであった。結局、頂上まで来てしまった。時計を確かめたら、11時半。所要時間は2時間であった。

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トンバル頂上より Pizzo Badile(3308m)を望む
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頂上で友の冥福を祈る
◆ トンバル登頂
 「此所まで、よく登ってこれたね・・・」「Uさんに励まされたから・・・かな?」と明るく笑う。
 実は、13日の日記にも記したが、此所も友人U氏の遺骨を埋葬した場所の一つなのである。2年ぶりのその場所は一面深い草が生い茂り、緩やかに走り去る涼風に優しく揺れていた。二人で草花を集めて束ね、立てたストックに結び添えた。御無沙汰を謝し、再会を祈念し乍ら友の冥福を祈った【写真上右】
 少し雲が出てきたが、素晴らしい展望に変わりは無い。Pizzo Badile をはじめ3000mクラスの峰峰が間近に迫り一段と迫力がある【写真上左】。昼食を済ませて、ゆっくり山々の写生に取り組んだ。 2時、雲が次第に厚さを増してきたので早めに下山することにした。


◆ ブレーメンの友と
 夕食を済ませてのち、隣室のドアをノックした。一人だけで宿泊していた彼は、とても喜んで迎え入れてくれた。ブレーメンに住む同好の仲間17人でやってきたと言う。1週間此所ソーリオに滞在して毎日近辺の写生を続けているらしい。今までに描いた作品を、全部見せてくれた。作品にはNOがつけてあり、これは良く出来た、とか、これは失敗作だとか。昨日スタンパのジャコメッテイ美術館に行き、彼の作品をみたお陰で、この作品は少し良くなったと思う、などなど。嬉しそうに、しかも淡々と自作について語ってくれた。お礼に、僕のスケッチブックも披露。絵はがきセットもプレゼントしたら大いに喜んでくれた。
 彼もリタイアして後、自分の趣味を楽しんでいると言う。「年を取り、それなりに身体の不具合はある。この腕の関節骨を見てくれ、大きくコブになっているだろう、時々痛むんだよ、しかしそれを心配して悲観的に考えたんでは人生少しも楽しくないからね。出来るだけ明るく前向きに生きるようにしているんだ。家内とは趣味が合わなくて、今は別居中だが、離婚する気はない。この方がお互いに気楽だからそうしているだけだよ。人生楽しく生きなくては!」「そうだ、そうだ」と合の手をいれたりして、楽しい夜の一時を過ごした。

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